介護老人保健施設などに勤務してみるとわかるように、限られた時間の中で大人数の方の介護をするということは、どうしても一斉作業が増えてしまいます。
たとえば、お昼は全員でホールで食べるという集団生活のルールがあるために、それまでに入浴を終わらせなければなりません。施設入所前は、夕食後に一人でゆっくり入浴していた方も、施設入所後は午前中のうちに短時間で入浴を済ませると余儀なくされる場合もあります。
QOLを重視する施設の場合は異なるかもしれませんが、まだまだこのような施設は多い傾向にあります。
仕事が早く終われば先輩に怒られることもないし、完璧にやっているという評価をもらえると思い、スピード重視の介護が正しいと思っている介護士もいます。もし、出来るだけ早く業務を終わらせることが、質の高い介護だと言う先輩がいるのならば、その施設は良い施設だとは言い難いかもしれません。
介護の質の高さを評価するのは、先輩ではなく入居者です。
決まった時間にトイレに行かされて、無言で淡々と排泄介助される高齢者の気持ちを考えたことはありますか。果たしてこれが、本当に質の高い介護なのでしょうか。
入居者の中には、介護施設に入所した時点で、生活の質を求めることを諦めてしまう人も大勢います。
自分のことを家族の厄介者だと思う人もいます。
もし自分が高齢者になった時、同じような待遇を受けたらどう思うか、考えてみてください。
介護士して高齢者の一番身近にいる人間として、毎日どのような関わりを持っていくことが必要か、個別に考えてみる時間を持ちましょう。
スピード重視の介護を行うことは、時に必要かもしれません。
しかし、スピードを重視する傍らで、相手も自分と同じ人間であるということを忘れずに関わっていくことが大切です。残された人生を過ごす場所が施設であると決められてしまった人達に対して、介護士は毎日どのようなサービスを提供していくことが出来るのでしょうか。
一人一人の高齢者にとって、毎日関わる介護士の存在はとても大きいということを心に留めながら働きたいものですね。