介護職員は、まれに利用者から暴力・暴言を受けることがあります。
利用者の中には、脳血管障害や認知症など、脳に器質的疾患がある方がいます。また、施設に入居したくないという気持ちが強くあったとしても、自宅で一人で生活することが困難だったり、家庭の事情で仕方なく施設に入居される方もいます。
脳の器質的疾患は、感情をコントロールする中枢機関に影響を与え、人格が変わってしまうことも珍しくありません。また、強制的に施設に入居させられた場合、心理的ストレスによって言動が粗くなったり、情緒不安定になる方もいます。
様々な事情を抱え、施設に入居している高齢者の一番近くにいる介護士は、時に利用者から叩かれたり、心無い言葉を言われて傷つくことがあります。
長年の介護士経験があれば、誰でもそのような経験はあるでしょう。
では、実際に利用者から暴言・暴力を受けた場合、どのように対処することが適切なのでしょうか。
一番大切なことは、一人で問題を抱え込まないことです。
暴言や暴力の原因が身体的・心理的問題に帰属している場合、スタッフ全体で情報を共有して症状の経過を観察していく必要があります。認知症が悪化しているような場合は、医師と相談しながら適切な治療法について検討していく必要が出てくるため、まずはスタッフに相談することが大切です。
相談相手としては、自分より経験の浅いスタッフではなく、職場のリーダーや主任、経験が豊富なスタッフが適していると考えられます。
また、申し送り時やケースカンファレンスで、必要な対応法について意見交換することも一つの方法です。利用者の多くは、何か直接的なトラブルがない場合家族から隔離されたという悲壮・認知障害による故意ではなく「症状」といて暴言や暴力が表出されるというケースがほとんどです。
故意ではなく、単なる対象者として「たまたま」居合わせたという認識で考えると、精神的に追い込まれることは少なくなります。
ですので相手の立場や症状をしっかり把握することで精神的に余裕を持つことが出来るため絶対に認識する事が必要です。
スタッフ間で情報を共有し、対象の利用者に一貫した関わりを持っていくことで、チーム全体として問題解決への糸口を見つけていくことが可能になります。
暴力・暴言を受けた介護士の精神的ショックは大きいものですが、それを直接的に受け止めるのではなく、
一歩引いた立場で考え、問題行動についてはスタッフ全員で情報共有していくことが重要なのです。